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平成9年に「女性のための電話相談」が東京ファミリーカウンセリングルームに開設されてから、6年が過ぎようとしています。 週2日、女性相談員が担当していますが、これまでに約2200件の相談を受けてきました。ここでは、平成14年4月から12月までに受けた300件についてまとめてみました。 |
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手近な相談方法の一つである電話相談には、その時どきの世相がいち早く反映され、ひきこもり、虐待、ストーカー、DV(ドメスティックバイオレンス)などに
悩む当事者や家族からの相談が、多数寄せられました。 平成13年10月にDV防止法が施行されましたが、この時期には夫の暴力に関する妻からの相談が急増しました。 相談者は30歳代までの若い世代が5割を占めており、相談内容ではDV問題を含め夫婦間の紛争が突出し、次いで親子関係に悩む親側からの相談の順となっています。 問題解決の糸口が見つからない、方向は見えていても判断に迷っている、自分の決断について第三者の意見を聞きたい、誰にも打ち明けられず聴いてくれるだけでいいなど、 相談には一人ひとりの切実な思いがこめられています。 |
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◆相談事例から 事例1 夫からの暴力 宏美さんにとって、結婚前には温和に見えた夫が、まさか暴力を振るう夫になろうとは想像もできませんでした。 職場で責任ある地位にいる夫は、他人の目には温厚な紳士と映るでしょう。しかし家庭にあっては、殴る蹴るを日常的に繰り返す暴君なのです。 「仕事のストレスを考えたことがあるか。気を利かせろ。お前が俺を怒らせるんだ」と容赦しません。 さらに夫は、小学1年の長男に対しても、「勉強時間が短か過ぎる。食物の好き嫌いが多い」など、躾と称して手を挙げるようになりました。 言い聞かせれば分かるのにという言葉を、何度飲み込んだことでしょう。「俺の子ども時代はこんな程度ではなかった。 それをくぐり抜けて来たから今の地位がある」と聞き入れてはくれないのです。 宏美さんは、最近長男が「家出したいよ」とつぶやいているのを耳にして、このままではいけないと考えるようになりましたが、自立への不安が立ちはだかります。 軽蔑しながらも高額な収入と昇進が約束されている夫と別れる決心がつきません。長年にわたって暴言や暴力に耐えてきた宏美さんは、どこか醒めた気持で暴力を受けている自分がいると言います。 |
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事例2 快活だった子なのに 昌子さんは4人家族。夫、社会人の長男、高校中退の二男がいます。 長男には何の心配もないのですが、二男の進路が見えず、親の忠告を無視したり反抗的な態度を見せるので、どう対応したら良いのか分かりません。 二男は、中学校ではバスケット部に入部して楽しそうでしたが、高校受験を控えた3年の初めに部活を辞めてから友人関係が変わり、生活が乱れ始めました。 登校したりしなかったりでハラハラさせられましたが、高校ぐらいは行かないとと言う親の勧めに従い、渋々受験して合格しました。 しかし高校に入学するとさっそく髪を染め、同級生との喧嘩で相手に怪我を負わせてしまい、退学処分になりました。 昌子さんは二男の気に入りそうな専門学校を探して勧めてみましたが、「どうせ長続きしないから入学金がもったいない」と言って動く気配がありません。 「親の思い通りにはならない」が口癖で、昼は寝てばかり、夜になると小遣いをせびり、行き先も告げずに出かける日々が続いています。 「長男はあんなヤツは放り出せと言います。夫はガミガミ言うなと私をたしなめるだけで何もしてくれません。私が言わなくて誰が言うのでしょう。 私一人が空回りしているようで……」と涙声で話し続けました。 |
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事例3 出会い系サイトにはまって フリーターだった幸子さんが、ペンションの求人広告を見て応募し、採用されたのは4年前のことでした。 海辺にあるこのペンションの繁忙期が過ぎた頃、周辺の民宿などで働く従業員たちの集まりがあり、ここで夫の慎吾さんと知り合いました。 慎吾さんは両親の経営するペンションを手伝っており、結婚した二人は少し離れた所にアパートを借りて、幸子さんは出産間近まで夫と一緒に働きました。 やがて長男が誕生しましたが、家族経営では夫の収入は変わらず、休日も様々な雑用に呼び出され、親子団欒の時間が持てません。 親の言いなりに働かされている夫が、歯痒くて仕方ありませんでした。 そんな時、のめり込んだのがインターネットの出会い系サイトです。そこには幸子さんのグチを受けとめてくれる男性がいました。 しかし、たびたび外出する幸子さんを不審に思った夫にメールを読まれ、すべてを知られることとなりました。 夫婦の話し合いは進展せず、態度を硬化させた夫は離婚調停の申立てを家裁に提出しました。 長男を連れて出ることは許されず、幸子さんは一人実家に身を寄せていますが、母子離ればなれの時間が長引いてしまって、落ち着かない日々を過ごしています。 |
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事例4 離婚から2年過ぎても 絵里さんは2年前に協議離婚をし、幼稚園児の長女を連れて実家に戻りました。 一緒に暮らす両親からいまだに離婚問題を蒸し返されるので、決して居心地は良くないのですが、他に行き場がありません。 離婚の原因は、夫の両親との同居のストレスを買い物で紛らしている間にカードローンがかさみ、それが夫に発覚して離婚を迫られたからです。 自らまいた種だから仕方ないと、納得してきたつもりでしたが、すっかり涙脆くなり落ち込んで、気力が回復しません。週3回のパートがやっとです。 生き甲斐だった子どもの存在が鬱陶しく思え、些細なことをヒステリックに叱り、叩いたりしてきました。 長女は祖父母に甘え、絵里さんの言うことを聞きませんが、突然しがみついてきたりもするのです。そんな長女を抱きしめてやれず、自責の念にかられて、いっそう落ち込む悪循環を繰り返しています。 |
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◆電話相談に見られる家族の現状 人と関わることが苦手、うまくコミュニケーションがとれないと訴える人たちが増加しています。 自他共に傷つくことを恐れて深く関わらず、外見は明るく振るまう日常生活の中では、自分の意思を率直に表現する力や相手の感情を読み取る力は育ちません。 結婚生活においては、互いの違いを認め合うこと、その上で共通点を見出し、時には譲り合いながら自分らしさを作りあげていくことが求められます。 難問とも思えない些細な事柄にも、本音で語り合うことに慣れていない二人の対話が噛み合わず、結婚歴の浅い若い世代の夫婦が、互いにこんな相手ではなかった筈と失望して非難し合い、 早ばやと結婚生活に見切りをつけてしまうケースが増加しています。 熟年世代では、夫に不満を感じつつも子どもが一人前になるまではと気を張りつめてきた妻が、夫の浮気を知ってキレたり、よい子と信じていた子どもの反撃を受けてうろたえたり、 成人した子どもまでも意のままに動かしたいとする母親などからの相談が目立ちます。 真面目で責任感が強く周囲の評価に敏感で、当人がよい子として育ってきたことを窺わせる人が多いように思えます。 夫の存在感は薄く、心労からうつ状態に陥るなどの心身の不調を訴える人も目立ちます。 異性関係の発覚が、見事に普及したパソコンやケータイのメールからであることが、今を象徴していると言えるでしょう。 |
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◆相談員からのメッセージ *過去にとらわれず、今何ができるか見つけませんか。 *自分の気持ちに敏感でないと他の人の気持ちにも敏感になれません。 *相手と立場を交換して考えてみませんか。 *相手への期待のハードルを少し低くしませんか。 *困難から逃げず、しっかり向き合って本音で関わるコミュニケーションを取り戻し、子どもに伝えることが、大人に求められている大きな課題ではないでしょうか。 |
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