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 2003年9月1日から4日まで、東京のホテルニューオータニで標記の大会が開催されました。 ローエイシア(LAWASIA)という団体は、1966年オーストラリアの提唱で設立され、アジア諸国の法律関係者が隔年催される大会に参加して幅広く討議し、 構造を異にする国と社会の法律問題の相互理解と融和に大きな役割を果たしているNGOです。 本大会のために当センター前理事長野田愛子氏他の方々が早くから企画、準備に当たりました。 日本がホスト国ということもあって総勢約750名の参加者のうち日本人が約500名を占め、当センター会員も数名参加し、かつ受付事務などに協力しました。
 開会式には皇太子、同妃両殿下のご臨席をえて、皇太子殿下からお言葉を賜りました。4日目の全体会議はアジア・太平洋最高裁判所長官会議との共同セッションとして行われました。 プログラムは大変充実していて会議のほか連日パーティーや昼食会が催され各国の参加者と語り合うなど国際交流が図られました。公用語は英語でしたが、 全体会議はもとより全ての分科会で討論も含め英語・日本語の双方向の同時通訳がついたので、言葉の壁を越えて相互理解をすることができたのは特筆すべきことでした。

 開会式に続く全体会議では元国連難民高等弁務官緒方貞子氏が基調講演を行い、人権尊重と法の支配の重要性を訴えました。 特に具体的にアジアの難民問題に焦点をあて、難民の人権を守るには国際的な協調が必要で自国の利益のみを図る一国行動主義に陥ってはならないこと、 難民は同情の対象ではなく国はかれらを保護するだけでなく自立のために尽力すべきことを強調しました。 昼食会のスピーチで香港最高裁長官アンドルー・リー氏は、社会の変動が加速度的に速まりグローバル化が促進される今日、 法曹は自分の国の法だけにとらわれることなく国際的な視野をもって社会の変動と科学技術の進歩に合わせること、法曹としての高い職業倫理と行動規範をもち公のために積極的に奉仕すべきことを訴えました。
 分科会は28のセッションが設けられテーマは多岐にわたりましたが、大別すると@ 司法や法曹のあり方、A 人権、B 経済・金融などの問題となります。 それぞれ3、4人のスピーカーが問題提起した後、フロアも交えて活発な討議が交わされました。 家庭に関連するテーマとしては、「変動する社会における家庭裁判所の機能」、「子どもの権利の保護」、「少年非行と少年司法制度の諸問題」、 「アジア・太平洋地域における渉外家事紛争への取り組み」が取り上げられています。 司法や法曹のあり方に関しては「ADR(代替的紛争解決制度)の未来」、「司法とジェンダー」、「グローバリゼーション時代の法律家の養成」などが取り上げられました。 いずれもわが国でも今ホットな問題になっているテーマです。
 野田前理事長がコーディネイトした分科会「変動する社会における家庭裁判所の機能」では、まず家庭裁判所調査官研修所教官の金子修氏がわが国の家庭裁判所制度、 特に家事事件の種類と対応について説明した後、家庭裁判所の当事者、特に子どもと面接、調査しその利益を守る家庭裁判所調査官の機能について詳述しました。 さらに離婚事件は調停で合意が成立しない場合の訴訟事件の管轄が地方裁判所から家庭裁判所に改められ、調査官の機能を活用できるようになることを説明しました。 家庭裁判所が1975年に創設されたオーストラリア、1981年に創設されたニュージーランドの両国からの発表者は、 家族のあり方が多様化(同棲婚、同性婚など含め)している現在、家裁は社会的ニーズに柔軟に対応していること、DVからの女性の人権を守ること、 国境を越えた子の移動や連れ去りから子の人権を守ること、子の意思を尊重し必要に応じて子自身の弁護士を選任すること、家族の問題を解決するために家裁はカウンセリング、メディエーション、 親教育など多様なサービスを提供することなど、援助を必要とする家族の人権を守ることを中心に柔軟でかつ多様に対応していることを紹介しました。
 「子どもの権利の保護」分科会では、どの国に視点を置くかによって提起する問題は異なっていました。 UNICEFから参加したサムエル・クー氏は発展途上国の子どもについて、劣悪な環境、低栄養、エイズなどの伝染病などにより生存の権利が脅かされている状況で国が改善に努力すべきであると論じました。 オーストラリアからのアンドルー・デイビース氏は国境を越えた子の不法な移動の防止、子の扶養、面接交渉などについてさらに国際的な協調が必要であるとしました。 ジョン・ブレナン氏は、オーストラリアの家裁では子の意思を尊重するために、子の意思を知る、または子の意思を表明する手段として子自身の代理人を選任する権利を保障していることを紹介しました。 小川富之氏は子をめぐる日本の法を紹介し、日本は子の権利に関する条約を批准したけれども、子の権利を完全に実現するためにはさらに国内法の整備を要するとし、 その一例として相続における非嫡出子の差別を挙げました。  オーストラリアに限らず先進諸国では、子を保護の対象としてみるだけでなく、 子自身の権利を尊重しなければならない--その重要な権利の一つとして「意見表明権」がある--という考え方が支配的になっています。 子の権利を実現する手段としては「子の代理人(弁護士に限らない)」を認める方向が主流のようですが、まだ日本ではそうした考え方はないようです。 日本の家裁では、例えば父母の間に子をめぐる紛争がある場合に調査官が中立的な立場で関わることができるので、子の代理人のようなものは必要ないということでしょうか。 確かに調査官は人間関係についての専門的な知識と技術を身につけており、子の権利を守るためにもその役割にはますます期待が高まっています。 ただ、成年後見事件や遺産分割事件など調査官の仕事は増大しているし、本当に必要な場合的確に関与できるかが問題かもしれません。  ところで「家庭裁判所調査官」の英語訳は"family court probation officer"とされています。 しかしprobation officerというのはもともと刑事事件で執行猶予になった者や仮釈放された者などを観察する役人を指しているので、 家事事件の調査や調整に当たる役職のイメージにはぴったりしない感があります。 わが国の誇るべき調査官制度について国際的な理解を増進するためにも訳語を検討するほうがよいのではないでしょうか。 例えば、"family court counselor"、"family court welfare officer"などが考えられます。

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 盛だくさんなプログラムは役員方の努力で滞りなく進行しました。閉会式と晩餐会はローエイシア大会の一大イベントです。 消防庁音楽隊の華やかな演奏やロボットのアシモ君のパーフォーマンスなどで盛り上がり、次期会長のインドのサンギ氏の挨拶があって大会は幕を閉じました。

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