第1 子どもがいる夫婦の離婚
FPICが「子どもがいる夫婦の離婚セミナー」や「面接交渉セミナー」を始めたのは,国際家族年といわれた1994年です。「どちらの親にも愛されたい!」(6平)など
親の離婚にゆらぐ子どもたちの側からも,離婚を考えることの重要さを説きました。離婚に反対するのではなく,どうしても離婚せざるを得ない場合,
親として子どもにしてやるべきことは何かを繰り返し説きました。第6号から第14号までの9回にわたるセミナーの紹介記事をまとめたのが,
平成12年3月刊行の第21号平成家族考「FPIC連続セミナー特集 子どもがいる夫婦のための離婚セミナー―親と子の新しい出発のために」です。
一部を抄録してみましょう。
1 離婚を決意するまで
離婚が挫折や敗北ではなく,真に新しい生き方の出発となるためには,多様な課題のクリアが必要です。文化人類学者P.ボアナンの6つの別れ,つまり,
@憎しみの感情との別れ A法律上の別れ B夫婦という社会的・社交的地位との別れ C経済上の別れ D共に暮らす親であることとの別れ E過去の自分との別れ,
について解説し,これらを丁寧に確実に乗り越えることで別れの作業は成就するとしています。
2 親の離婚を子どもにどう伝えるか
離婚を決心したときには,父母の別れを子どもに伝えなければなりません。 多くの子どもは,自分の身に何が起ころうとしているのか,不安と怒りを感じています。
別れを決意したら,きちんと子どもに伝えましょう。離婚は,父と母がうまくやれなかったからであると話す必要があります。
子どもは,親が離婚したのは自分のせいだと思いがちだからです。別れた方がよいか,父母のどちら正しいかなど,子どもに意見や判断を求めてはいけません。
子どもに責任を負わせることは避けるべきです。子どもは,両親からその血を引いています。
相手が悪いから離婚するという親の言い方は,子どもに自己否定や自己嫌悪の感情をもたらします。
子どもに,離婚は全人生の失敗ではないこと,今は落ち込んでいるが,人生すべてに失敗したわけではなく,いずれ立ち直ることを伝える必要があります。
そして,たとえ別れて暮らすことになっても,親子はいつまでも親子であり,子どもの成長を支え続ける責任があることを伝える必要があります。
3 別れて暮らす親子の生活基盤
婚姻中に夫婦で協力して得た財産は,離婚の際に財産分与という清算をすることになりますが,ずっと家事をして夫を支えてきた妻にも潜在的な持ち分があるとされ,
財産形成に対する夫婦の寄与は,五分五分と考えられています。
財産分与には,すぐには自立できない母子への生活保障的な意味や婚姻破綻に責任のある場合の慰謝料的な意味を含ませることもあります。
二人だけの話合いでまとまらなければ,家庭裁判所に調停又は審判を申し立てて決めてもらうことになります。
離婚して夫婦は他人になっても,双方が子の親であり,子の養育に責任があることには変わりがありません。
したがって,子と別れて暮らす親は,子を監護養育する親に対して養育費を支払わなければなりません。
その額は,子の必要生活費を父母の基礎収入で按分して算出します(編注 その後,当法人は厚労省の委託を受けて養育費相談支援センターを開設し,
電話相談(月〜土曜日の10〜20時)やメール相談等を行っていますので,気軽に相談してください)。
養育費について当事者同士で話合いがつかないときは,家庭裁判所の調停か審判で決めてもらうことができます。
養育費は,別れて暮らす親と子を結び付ける大切な絆です。
4 その他
面会交流については,第3でまとめて紹介します。「子どもがいる夫婦のための離婚セミナー」は,現在も続けて毎年実施されていますが,
平成21年10月刊行の第48号平成家族考「最近の夫婦・親子をめぐる紛争―FPICの相談等からのぞく世相の断片」によると,
離婚後の子どもをめぐる相談が増加していることが分かります。
第2 離婚した親と子どもの声を聴く
平成17年6月刊行の第35号平成家族考「離婚した親と子どもの声を聴く」では,
親の離婚を経験した子ども96人と子どもがいて離婚した親101人に面接等の調査を行った結果を報告しています。
この中から子どもの声が訴えているものを,次のようにまとめています。
@子どもは苦痛を強いられる立場にありながら自分の気持ちを理解してもらっていない。A子どもはどちらの親からも愛されたい。
B子どもは親の離婚がもたらすマイナス面にもかかわらず,プラス面を杖に逆境を乗り越えるしなやかさを持っている。
自分の体験から今後親が離婚しようとしている子どもへのアドバイスとして,「自分を卑下しない」,「離婚は親の問題」,
「親には親の人生があることを分かってほしい」,「いろいろな家庭いろいろな人生があることを考えてほしい」,「時間が解決してくれる」,
「苦しい思いをした分だけ自分で生きる力がつく」など,乗り越えた強さと優しさをにじませた助言をしています。
第3 親子の面会交流
子どもがいる夫婦の離婚の問題から特化して集中的に取り上げてきたのが,別れて暮らす親と子の面会交流の問題です。
離婚により他人同士になったとはいえ,父母は,子どもの健やかな成長のために協力し合うよきパートナーとなり,子どもと別れて暮らす親は,
子どものために養育費を支払わなければなりませんし,子どもと一緒に暮らす親は,
子どもと別れて暮らす親に子どもとの面会交流を子どもの福祉を害しない限り認めなければなりません
(「面会交流を上手に―離婚後の親が子どもの健やかな成長のためにしてやれること」(34平))。離婚時の気持ちの整理ができず,
よきパートナーとなっていない父母の場合は,面会交流の実施は第三者の援助を得なければ難しいでしょう(FPICは,事業の一環として面会交流援助を引き受けています)。
「財団法人女性のためのアジア平和国民基金」からの委託を受けて,面会交流について調査した報告書「新しい関係を築くためのヒント―離婚後の面接での事例を中心として」
(平成16年3月)を基に,面会交流の自力実施事例,要援助実施事例を紹介し,よきパートナーとしての面会交流の要因を,@離婚への肯定感,A自己洞察,
B相手への肯定感,C面会交流への肯定感,Dサポート資源の存在を挙げています。
平成18年には,「お父さんへの応援歌―面会交流の経験者に学ぶ『お父さんの集い』から」(37平),「お母さんへの応援歌―セミナー『上手な面会交流の進め方』から」
(38平),「子どもたちへの応援歌―子どもの立場から面会交流を考える」(39平)と3回続けて取り上げています。
「子どもたちへの応援歌」では,面会交流援助の実際場面での子どもたちとして,父親のTシャツをまくり上げ,「パパだ,ボクのパパだ!」と叫んだ子や,
父親に「お母さんの名前に変わったんだって?」と聞かれて,「でも,ぼくはお父さんとお母さんの子だから,
本当は中村山川太郎だとお母さんが言ったよ」と答えた子どもに「いいお母さんだな」と父親がフォローした,
別れても相手を立てる両親を持った幸せな子どもなどが紹介されています。幼い子どもにどう接してよいか分からない父親の場面で,
子どもにボールを持たせて「会えてうれしいという気持ちをパパに届けようネ」と父親に渡させ,父親にも「パパもうれしいよ」と返させるなどの介入をしたり,
子どもを独りでトイレに行かせようとする父親に,「こんなときは一緒に行って連れションするのがお父さんじゃないですか」と助言したりした例も紹介されています。
海外トピックスでも外国の面会交流について紹介しています。「刑務所にいても子どもに会いたい(米国)他」(6海),
「祖父母は父母の反対を押し切って孫に会えるか―アメリカの二つの憲法判断」(8海),「インターネットでの面会交流など(アメリカ・イギリス)」(38海),
「リロケーションは許されるか―子を伴う監護親の転居の是非(アメリカ合衆国)」(39海),
「オーストラリアの面会交流援助をめぐって―期待と実際に関する研究から」(47海)などです。
アメリカの国内でのリロケーションの問題を紹介したのは4年前のことでしたが,今や国境を越えての問題に広がる気配です。
第4 高齢者の福祉(成年後見制度)
本誌が高齢者の問題を最初に取り上げたのは平成5年9月刊行の第3号平成家族考「お年寄りの介護―看る人 看られる人」でした。
事例を基に,FPICからの提言として,@介護の支援態勢の充実を,A看とる者の心の支えを,B看られる者の意思の尊重,C心身両面の介護を掲げています。
同号のアラカルトには,「心は自立―高齢者の心意気」や「お年寄りの相談」が掲載されており,せかさず,じっくり聴いてあげることの効用等が説かれています。
例を見ない速さで高齢社会になり,暮らしと財産を自分で守れない高齢者が増え,早急に成年後見制度の制定が求められるようになりました。
平成8年1月刊行の第9号海外トピックス「老後の暮らしと財産をどう守る?―『成年後見制度』の必要性」では,
カナダの成年後見法とドイツの後見人に代わる世話人の制度が紹介されています。
第14号平成家族考「老後の暮らしと財産をどう守るか―超高齢社会における新たな制度について考える」では,
約100年前に制定された禁治産宣告と後見制度の問題点を解説し,ドイツの世話人制度を紹介しながら,高齢者の残された能力を生かす制度の早急な制定を求めています。
第18号平成家族考「新たな『成年後見制度』実現へ―お年寄りの暮らしと財産を守るために」において,
成年後見制度の改正を審議してきた法制審議会民法部会が発表した「民法の一部を改正する法律案等要綱案」の要点を解説し,学者,弁護士,
実務家等の意見も紹介しています。後見人に広範な代理権を付与すると乱用の危険があることを指摘しています。
第19号は全ページを平成家族考「座談会 成年後見の実際について語る―後見人等の体験と後見監督の体験から」に充て,
国会に提出された成年後見制度改正に関する一連の法律案を,これまで実際に後見人,後見監督人を経験した会員に検討してもらいました。
その結果をまとめると,@被後見人等の能力をどのように見極め,どのように意思確認をするか,A後見人等の職権乱用を防止し,
被後見人等の利益を保護するためにはどうするか,B家庭裁判所は後見人等をしっかり監督しないと良心的後見人等は悩み,悪質な後見人等は笑うことになる,
C後見人等が親族間の紛争のなかで重大な決断を迫られたとき,家庭裁判所とどのような連携が取れるのか,
D後見人等候補者の組織づくりの必要があるのではないか等の指摘がありました。
発足2年半後の平成12年10月刊行の第28号平成家族考「成年後見制度はどのように利用されているか―新制度発足2年間の実績を見る」では,
最高裁判所事務総局家庭局が発表した2年間の統計や事例を紹介しています。発足4年後の第32号の平成家族考「成年後見人等の仕事の実際」では,
FPICが成年後見人等になる会員のために行ったセミナーから,成年後見人及び後見監督人の行う仕事の実際を紹介しています。
第44号平成家族考「成年後見制度の問題点―発足以来8年の実績から」では,@利用のしにくさ,A後見制度にひそむ危険性,B後見監督の無力さ,
C経費と報酬,D後見人候補者の養成,E後見人等の水準と倫理,等の指摘をしています。
海外トピックスでも第23号「ドイツの『世話制度』とわが国の『成年後見制度』」で,ドイツの世話人の育成援助や報酬の国庫負担などを紹介して,
わが国でも後見人等の育成援助や報酬の助成などの支援をしない限り,資産,収入のない老人は救われないと危惧しています。
第5 家庭内の暴力(ドメスティック・バイオレンス)
1 乳幼児・児童虐待
平成8年5月刊行の第10号平成家族考「子育てが《虐待》に姿を変えるとき―乳児虐待という悲劇から子どもと母を救うために」では,
「ミルクを飲み切らないことにいら立って,吐き戻すのもかまわず乳首を押しつけてしまう」,「夜泣きが続き,自分でもおろおろしているのに,
《うるさい!なんとかしろ,母親だろう…》などと夫に言われ,すっかりパニックになって,
気がついたら子どもの顔をタオルケットで押さえていた」などの相談を紹介しています。
そして,乳児虐待の起こる原因として,激変した乳児環境を挙げ,よい母親へのあせり,完全な子育てへのとらわれと自信喪失を挙げています。
これまでよい子になる努力をして順調な人生を送ってきたのに,子育ては思いどおりにいかず,初めての挫折で自尊心は深く傷つき,
子どもが憎くなるなどのメカニズムを解説しています。
子育ては父母の協働作業であり,乳児虐待に悩む母親に対しては,予防的対策,緊急の対策,治療的対策を解説しています。
第24号平成家族考「親による子どもの虐待―虐待という悲劇から子どもを救うために」では,全国の児童相談所において虐待に関する相談処理件数が急増し,
マスコミは,親と祖父母等が寄ってたかって子どもに暴力を振るって死なせた例や,親が子どもを段ボールに閉じ込めて食事もろくに与えず衰弱死させた例など,
痛ましい事件を連日のように報道していることを紹介しています。平成12年11月20日に児童虐待の防止に関する法律が施行されて半年が経った機会に,
子どもの虐待の背景や対策について考察しています。虐待の背景として,「@子育ての支援が得られず,育児が孤独な作業となり,心理的に追い込まれやすい。
A完璧な育児をしようとするが,マニュアルどおりにならないとパニックになりやすい。B家庭や社会に不満を抱き,些細なことですぐ切れる未熟な親が増えており,
子どもをうっぷん晴らしの対象としやすい。」を挙げています。児童虐待防止法が施行されても「司法は法に具体的な規定がないためか適用に慎重過ぎ,
行政はこのためか司法の活用に消極的,立法は法の適切な運用を期待するだけ…これでは悪循環で,結局子どもは救われない」とし,法に具体的な規定,例えば教師,
医師など虐待を発見しやすい立場にある者には罰則つきの報告義務を課すなどの措置が必要,としています。
子どもの保護の第一線に立つ児童相談所には専門性,活性化を求め,根本的な対策としては,子育て支援,心理的に追い込まれている親への援助,
発見から対応までをカバーする総合的な体制づくりの必要性,を述べています。
また,この第24号海外トピックス「法廷から見る児童虐待の諸相(アメリカ)」では,@胎児は被虐待児ではないとされた事例,A新生児が被虐待児とされた事例,
B監護親のみの親権停止が合目的とされた事例,の3つの裁判例が紹介されています。
平成15年10月刊行の第30号平成家族考「児童虐待はなぜ増え続けるのか―ネグレクト(保護の怠慢)を中心に深刻化のメカニズムを考える」では,
家庭裁判所調査官研修所が刊行した「児童虐待が問題となる家庭事件の実証的研究」という小冊子の中から,児童虐待のうちネグレクトを中心に紹介しています。
ネグレクトとは,児童虐待防止法によると「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること」
とされています。ネグレクトは,家庭という密室の中で外部に知られることなく続けられ,深刻化した状態でようやく発見されるという経過をたどっています。
@ネグレクトが子どもに及ぼす影響,Aネグレクトが生じた家族の特徴,Bネグレクトはどのように深刻化するか,Cネグレクトの深刻化を防ぐためには,
Dネグレクトが増え続けないために,の5つの側面から分析しています。虐待の通告を受けて児童相談所が立ち入り調査をしようとしても,強大な親権,監護権を盾に,
他人にとやかく言われる筋合いはないと,ドアも開けてもらえない現場の状況を打開しない限り,ネグレクトは一層深刻化すると指摘しています。
事実,今日でも残酷な事例が頻繁に報道され続けています。
また,この第30号海外トピックス「法廷から見る児童虐待の諸相・パートU(アメリカ)」では,@不潔な住居が子の福祉を害するとされた事例,
A兄への虐待等と当該新生児の要保護性,B宗教上の信条から医療を拒む親の監護権をめぐる事例,C妊娠してはならないという保護観察遵守事項の不当性,
の4つの裁判例を紹介しています。
2 妻への暴力
平成8年9月刊行の第11号平成家族考「彼女たちはなぜ暴力的な夫のもとにとどまるのか―殴る夫と殴られる妻の関係を考える」では,ケースを踏まえて,
暴力的な夫が作られる背景として,@殴る親を見て育った夫,A妻に負けたくない夫,B未熟な夫=母親代わりを妻に求める夫,C嫉妬深い夫,を挙げています。
殴られても夫のもとにとどまる妻として,@先行きの不安から逃げられない妻,A私がいないとあの人は駄目になると考える妻,B自分でも気づかずに暴力的な夫を選ぶ妻,
C逃げる気力をなくした妻,の4つのタイプを挙げています。そして,逃げられない妻たちへの助言として,
@夫による暴力は妻の人間としての尊厳を根底から破壊する行為であることを強く自覚し,沈黙と抗議の姿勢を示し,自己主張すること,A夫との共依存の渦から抜け出し,
専門家の心のケアを受けて自分のために生きること,B家庭裁判所,弁護士会,福祉事務所等に相談すること,
C夫の暴力が嗜癖化しているときは暴力から身を守るために最寄りの福祉課などに相談し,シェルターへの避難を考えるよう勧めています。
平成14年2月刊行の第26号平成家族考「ドメスティック・バイオレンスからの救済―配偶者からの暴力を防止する法律が施行されました」では,
平成13年10月13日に施行された「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(いわゆるDV防止法)について解説しています。
DV防止法により,配偶者間の暴力が犯罪であることを明記し,国や地方公共団体に被害者保護の義務があるとして,
都道府県に被害者保護の中核となる配偶者暴力支援センターを設置することを義務づけました。また,裁判所が加害者に対して,
6か月間の被害者への接近禁止や2週間の住居からの退去命令制度が新設され,その違反者には罰則が設けられました。被害者の保護には大きな力となることは明らかです。
ただ,加害者の暴力的心理状況を放置すれば再び暴力を繰り返すおそれや,離婚を考える被害者は子どものことや離婚のことなどで,
加害者と話し合わなければならないなど課題は残っていると指摘しています。
また,DVに関する海外トピックスとしては,この第26号「DVに対する総合的な取り組み―ワシントンD.C.のDV法廷を中心に」で,DV法廷を紹介していますが,
わが国のDV防止法と比べて,ワシントンの場合は,手続が簡易で,子どもの養育費や監護の変更命令もでき,住居退去期間も最大1年間であり,
加害者へのカウンセリング受講命令など治療への配慮があるとしています。第27号「DVの職場に及ぼす影響(ニューヨーク州)」では,雇用主はDVの被害者を解雇したり,
不採用としたりしてならないとしており,第28号「DV加害者への治療(イリノイ州ケイン郡での試み)」では,DV加害者への保護観察プログラムを紹介し,
第32号「DVに裁判所がなすべきことは?―ニューヨーク州の実践に学ぶ」では,DV法廷を創設したニューヨーク州はモデル的な存在で,
専任の支援者をつけるなどの被害者サービスを充実させ,裁判所は告訴から判決,遵守状況の監督まで一人の裁判官が担当し,
加害者行動変容プログラムなど治療にも力を入れる改革を紹介しています。第43号「デートDVの撲滅をめざして(米国)―DVの悪循環を止めよう」では,
15〜19歳のアフリカ系アメリカ人の女性の死因の第1位は親密な交際相手からの虐待であることなどから,成人してからDVの加害者,被害者となるという連鎖を断ち切ろうと,
デートDVの危険信号チェックリストを示して,家庭,学校,地域が一体となって取り組んでいる様子を紹介しています。
第6 子育て・子どもの問題
本誌は,親の離婚と子ども,子どもの虐待の問題以外にも,子育てや子どもの問題についても多くの論説を掲載しています。
「いま,日本の子どもたちは幸せか」(5平),「子どもたちは何を…?―言葉にならないメッセージ」(5ア),「キーワードで見る『いじめ』の構造」(7ア),
シリーズ「子育てを楽しくするために」(13ア,14ア,15ア),「変身する子どもたち―おとなしい子がどうしてすぐキレるのか」(15平),
「14,5歳の子どもたち―年少少年と呼ばれる思春期の中学生について考える」(17平),「若者たちの社会的引きこもり―自分の価値を見出せない苦しみ」(22平),
「今どきの子どもたち」(26ア,続28ア),「再び問う,『いま日本の子どもたちは幸せか』―『ふぁみりお』に見る子どもたちの世紀末」(23平),
「赤ちゃんと心のキャッチボールを―乳児期の発達課題『基本的信頼感の獲得』について考える」(27平)などがあります。
平成10年5月刊行の第16号平成家族考「少年法について考える―少年非行の推移を踏まえて現状を正しく理解するために」では,
少年法を改正して少年にも厳罰を科すべきだという風潮に対して,統計を提示して少年非行は増加も凶悪化もしていないことを指摘しています。
そして,少年非行が増減する主たる原因は,評論家や識者が強調するような核家族化や父権の不在でも学校の偏差値教育や管理体制などではなく,
少年人口そのものの増減にあると述べています。平成21年2月刊行の第46号平成家族考「少年非行は今どうなっているのか―平成20年版『犯罪白書』から」では,
家庭も学校も社会もそれほど好転しているとは思えないのに,少年非行は減少の一途をたどっている統計を提示して,本誌の指摘が正しかったことを明らかにしています。
その他,「触法少年の凶悪事件について考える―11,2歳の子どもの心の闇は深くなっているか」(33平),
「戦後60年の若者群像を見る―いつの時代も若者たちは大人を不安がらせて来たが…」(36平),
「なぜ少年は殺人を犯したのか―『重大少年事件の実証的研究』に見るその親子関係」(23ア),
「エリオット・レイトン著『親を殺した子供たち』を読み返す」(42ア)などがあります。これらの少年非行についての論説や解説では,
少年たちの自尊心の傷つきと回復がキーワードとなっています。
第7 FPICによる離婚協議等調停事業の開始
離婚の9割を占める協議離婚できちんと取決めをしていないために,離婚後に紛争が起こる場合が多いことから,
平成19年2月刊行の第40号平成家族考「協議離婚について考える―合意しておくべき事項とそれを守らせる手続の確保」で, 警鐘を鳴らしました。
そして,平成21年6月刊行の第47号平成家族考「FPICが離婚協議等調停事業を始めました―人間関係の専門家が夫婦関係と子の監護についての調停を行います」で
紹介したように,FPICは,民間紛争解決機関としての認証許可を受けて,平成21年4月20日から東京と大阪のファミリー相談室で調停事業を始めました。
要望があれば,夜間,休日にも調停を行い,短期間での調停成立を目指しています。
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