家庭問題情報誌ふぁみりお 第21号
子どもがいる夫婦のための離婚セミナー -親と子の新しい出発のために-

 離婚によって、夫婦の関係は切れて他人となりますが、親と子どもの関係は切れることはありません。しかし、これまで二人の親と暮らしていた子どもからすれば、これからはどちらかの親とは別れて暮らすことになり、現実的には一人の親を失ったような状態になります。また、転居や転校を余儀なくされるなど、心的、物的環境の激変に遭遇することにもなります。

 やむをえない選択としての離婚が、できるだけ子どもの心を傷つけず、子どもの福祉を確保しながら、親と子の新しい生き方の出発点となるようにと願って、当センターでは6年前からこのセミナーを開始しました。参加者の皆さんからは、離婚の前後に直面するさまざまな問題を、自分ひとりの悩みとして抱え込むのではなく、子どもを持つ親に共通の問題としてとらえることができたとの評価をいただいています。

 このセミナーについては、本誌第6号から第14号までの9回にわたって断片的に紹介してきましたが、多くの方々からの要望もあり、本号はそれらをまとめて紹介する特集号としました。

1 離婚を決意するまで - 6つの分かれと4つのポイント
(1) 六つの別れ

 文化人類学者P.ボアナンは、「離婚は、両親から夫婦としての関係を断絶させるが、子どもの父母としての《今後も創られていく関係》まで壊すものではない」と言っています。離婚が挫折や敗北ではなく、真に新しい生き方の出発となるためには、離婚に伴う多様な課題のクリアが必要です。ボアナンの「六つの別れ」について考えてみましょう。

憎しみの感情との別れ
 「あの屈辱を思うと頭がぐらぐらとして怒りがこみあげてくる」とか「もう愛してなんかいない。でも忘れられない」などの感情をどうやって整理したらよいのか。愛する人の喪失に終わるこの情緒的別れは、攻撃、自責、見捨てられ感、報復心などの執拗な拒否感情や嘆きとの対決です。これをときほぐすために、どれほどの歳月を要することになるのか、孤独な鎮魂の作業が求められます。
 
法律上の別れ
 いままで続いていた結婚を法的に解消することに伴う身分上の変化は、手続が進行するにつれて、時として本人自身に当惑を感じさせるものです。もはや妻でも夫でもなくなる自分を受け入れ、さらに、相手の非を一方的に責めることに終始するのでなく、現実的な解決方法を選択できるためには、手続の過程で、丁寧に別れの儀式を積み重ねることが大切です。離婚届を出すことが、その一連の儀式の厳粛なフィナーレとして受け止められるでしょうか。
 
夫婦という社会的・社交的地位との別れ
 親族や共通の友人が、もはやカップルとして認めてくれないと感じたときは、怒り、絶望、困惑の感情が先立つものです。古い絆との断絶は、それを自ら求めている場合でも喪失感を伴うもので、こんなはずではなかったと思うこともあるでしょう。別れには、このような両面感情を克服することが必要です。
 
経済上の別れ
 離婚への合意がきちんとできていない場合には、合理的でない理由で不当な財産上の請求をして譲らないとか、逆に「金額などどうでもいいのです」と投げやりになってしまいます。今後の生計維持のための実質的な話し合いを積み重ね、小さくても自分の青空を持つ自分が交渉の場に存在することが大切です。
 
共に暮らす親であることとの別れ
 親は、どうしたら、いつなら、子どもを傷つけないで別れることができるかと迷いますが、離婚をする、しないにかかわらず、また、その時期にかかわらず、夫婦の紛争のなかで、子どもはすでに傷ついているのです。結婚の失敗は父母の間の問題であって、子どもの責任ではないことをきちんと伝えるならば、そして両親が共同で監護できなくなった後でも、親子であり続けるのだとの安心感を与えることができるならば、子どもは十分に救われるはずです。心配ばかりせずに、子どもの力を信頼してほしいものです。
 
過去の自分との別れ
 夫婦の関係は、人間関係のなかでも最も強い依存と結合が生じる関係です。もはや愛していない相手であっても、それからの分離によって一時的に不安定な状態が生じても不思議はありません。しかし、依存から訣別し、精神的に密着していた相手なしに生きる自立を学ぶことによって、人間としての別れの作業を成就させることができるでしょう。

(2) 四つのチェック・ポイント

 どの「別れ」にも痛みが伴います。堂々めぐりが続きます。そんなとき、意地や勝ち負け意識から解放され、結婚の失敗を客観的に見直す手だてはあるのでしょうか。「四つのチェック・ポイント」を考えてみましょう。

互いの結婚観、結婚動機に問題がなかったか
 将来に向けての展望や家庭像が描けないのに、適齢期意識、実家の家族葛藤からの逃避、妊娠等、結婚が消極的な動機から出発したためではないか。
 
夫婦固有の文化が形成されていたか
 双方が実家の支配や影響力に引きずられたまま、夫婦の新たな生活習慣や文化を創ることも、譲り合うこともできなかったのではないか。

未解決の心理的問題がなかったか
 癒されないまま抑圧している心理的外傷があって、認知や感情にゆがみが生じているのに、それに気づいていなかったのではないか。
 
男女のライフサイクルの違いを理解していたか
 女性の産前産後、更年期、男性の定年等の人生の節目の違いに対して、相互に理解不足だったのではないか。

親の離婚を子どもにどう伝えるか
 子どものある夫婦の離婚は、夫婦だけの問題ではなく、それに巻き込まれる子どもにとっても大きな問題です。幼いとき親の理想的な離婚を経験した子どもが、長じた後にも、心の奥底では《時計の針が逆に回って離婚がなかった状態に戻れたら》とのファンタジーを持ち続けているとのことです。親は、離婚を決意するまでの過程で、そして決心したときに、父母の別れを子どもに伝えなければなりません。子どもの心を少しでも傷つけないように、離婚をどのように伝えたらよいか考えてみましょう。

子どもはすでに傷ついている
 子どもは、両親の不和のなかですでに深く傷ついています。幼い子どもの場合には、両親が仲よくなってほしいとの願いが言葉や行動に出せないので、チックなどの身体症状が出たりします。
 学齢期以上になると両親の関心を自分に向けさせようと非行に走ったりする一方、年齢不相応のしっかり者を演じて傷に触れさせない子どももいます。
 親の暴力を目撃した子どもは、その後も恐怖感に襲われて苦しみます。それでも子どもは少しずつ成長し、自分らしく振る舞うことを学びます。そんなとき、自分を振り向き、抱き締め、大事にしてくれる対象がいてくれることを夢見たりもします。
 
正直に話す
 多くの子どもは、自分の身に何が起ころうとしているのかが分からないために、不安と怒りを感じているのです。親がいたずらに迷い、決断を長引かせるのではなく、別れを決意すれば、子どもはそれなりに理解します。きちんと伝えましょう。隠しごとや嘘は、子どもに余計な想像をさせ、不安を増大させます。
 
子どもには責任を負わせない
 離婚は父と母がうまくやれなかったからであると話すことが必要です。子どもは自分の言動がもとで親が離婚したと感じると、自分は悪者だと決めつけます。
 別れた方がよいか、父母のどちらが正しいかなど、子どもに意見や判断を求めてはいけません。子どもはそれを期待される立場にはないのです。
 子どものために離婚しないで我慢するという言い方も、子どもに負担を感じさせることが多いものです。
 
他方の親の悪口を言わない
 子どもは両親からその血を引いています。相手が悪いから離婚するという親の言い方は、子どもに自己否定や自己嫌悪の感情をもたらします。悪いと言われる血を半分引いていると思うからで、特に、非難される親と同じ性の子どもの傷は深くなります。
 
離婚は全人生の失敗ではない
イメージ(子ども) 人間は完璧ではなく、親には欠点も長所もあります。親は結婚には失敗しましたが、仕事や友人関係などはうまくいっているかもしれません。また、今は落ち込んでいますが、いずれ立ち直れるでしょう。人生すべてに失敗したわけではないのです。子どもにそのことを伝えることが大切です。
 子どもは結婚がうまくいかないと、人生すべてがだめになるような不安を感じて、結婚に否定的になったりすることがあります。
 
いつまでも親子は親子
 子どもは、親の離婚によって一方の親と暮らせなくなるだけで、生涯、親子の縁は切れないのだと伝えることが大切です。それは、子どもに、別れて暮らす親から見捨てられたり、自分が親を見捨てたというような感情を抱かせないためです。
 また、別れて暮らす親も、子どもの成長を支え続ける責任があるからです。子どもと一緒に生活する親は、別れて暮らす親と子どもの交流を保障してやらなければなりません。

3 どちらの親が親権者になるかを決める
 未成年の子どもがいる夫婦が離婚することは、父母のどちらか一方が親権者になるのをあきらめることを意味します。あきらめることもできず、単独で親権を行使する条件の折合いもつかずに抗争を繰り返すことは、家族の全員を深く傷つける結果となるでしょう。離婚が新しい親子関係の出発点となるために、次のことを考えてみましょう。

子どもはだれのもの
 以前は、子どもは家のものという考え方が強かったために、昭和20年代までは、父親が親権者になる場合が大半でした。家を出た母は、経済力の弱さもあって、木陰からわが子の姿をそっと眺めるのが精一杯という時代が長く続きました。核家族化が進んだ昨今では、子どもは家のものという考え方は後退しました。統計的には母が親権者となる割合が圧倒的に多くなっています。とは言っても、なかには、「離婚してくれるなら親権はおまえにやる」と離婚に応じさせる条件にしたり、「そんなに親権者になりたいのなら養育費の請求などするな」と話をすり替えようとしたりするなど、真に子どものことを考えて話し合うというよりは、親自身の勝ち負けの感情や損得の計算が先行している場合も見られます。子どもは家や親の所有物ではないということを、頭を冷やしてよく考える必要があります。
 
親権は子どものための親の義務
 民法上示されている親権の内容には、
  1 子の監護及び教育をする権利・義務
  2 必要な範囲で子どもを懲戒する権利
  3 子が職業を営むことを許可する権利
  4 子の財産を管理する権利
  5 財産関係の法律行為について子を代表する権利
イメージ(悩む母親)などがあります。これを見る限り、親権者となった親は絶大な権利を与えられていることになります。しかし、これらは、子どもを親の支配下に置く権利というよりは、子どもを健全に育てる責任を果たすために親に与えられた権利であって、子どもが成人するまでの親の責任と義務であると考えるべきでしょう。
 また、親権者が決められても、その後、親の監護能力や子の状況などが変わった場合には、家庭裁判所の調停や審判で親権者の変更をすることができます。
 
合意を阻む不信感
 離婚することに双方異存がなくても、親権者をどちらにするかについて合意が得られないときは、協議離婚はできません。家庭裁判所の調停で話し合うことになります。家庭裁判所では、双方の主張を聴き、場合によっては子どもの意向や養育環境の調査なども行って、実情に即した妥当な合意が得られるように調停を進めます。子どもが幼い場合には、なるべく現在の環境を変えないのが望ましいと考えられています。慣れ親しんでいる世界を子どもから奪うことは、子どもの心に大きな喪失感を与え、基本的な安心感の発達が阻害されるおそれがあるからです。きょうだいを離ればなれにさせることも、同じ理由から避けるのが望ましいと考えられています。
 双方の親が親権にこだわった末に次善の策として、子どもの法律上の代理をする親権者と、実際に子どもと暮らして生活上の世話をする監護者とに分けるという考え方もあります。親の立場から見れば合理的にも思われるかもしれませんが、子どもの福利に適うものかの点では大変疑問です。子どもが手術を必要とする緊急時に、子どもに代わって手術の承諾をする親権者が遠く離れているなどの不都合を考えただけでも、自明のことです。
 双方が、「あんな相手に親権を渡したら子どもまで悪い性格になってしまう」などと不信感をあらわに激しく対立して譲らないときは、離婚の調停は成立しません。地方裁判所で裁判をすることになり、なかには親権者の適否の鑑定まで求めて争うケースもあります。

子どもはどちらの親からも愛されたい
 単独親権になっても、子どもの権利はこのために半分になるわけではありません。子どもはいつも、両方の親から愛されることを望んでいます。親は、まず、このことをきちんと受け入れましょう。たとえ結婚には失敗しても、また、生活や姓は別々になっても、かつての配偶者を《親同士》というパートナーとして見直す作業を始めましょう。親権の有無を超えて築かれる新しいパートナーシップを、子どもは何よりも望んでいます。

4 別れて暮らす親子の生活基盤
離婚は親子の再出発
 離婚しようとする夫婦に未成熟の子がいる場合、特別な配慮が必要です。未成熟の子とは、自分の収入で生活できない子のことで、未成年の子とは範囲が異なることがあります(例えば、大学生は20歳を越えていても扶養を要するので未成熟子ということになりますし、高校を出てすぐ就職した子は未成熟子ではありません)。父母の離婚は、とりわけ未成熟子に物心両面にわたって大きな影響を及ぼします。感じやすい年頃の子は口に出して言わなくても心を痛めることが多いでしょう。
 親の側としても、子育ては両親そろっていても大変な事業です。子を引き取る親は、基本的にこの事業を一人で担っていくという覚悟が必要です。別居している親に協力を求めることは、子にとっても好ましいことですが、わずらわしさもあるでしょう。別居している親も親子の縁が切れるわけではなく、親としての責任を免れません。別居しても親として責任をとらなければならない、一方の親とは夫婦としては別れても子の親同士として協力しなければならないという立場は容易なものではなく、これまた相当な覚悟が必要です。つまり、親の離婚は双方の親と子にとっての厳しい再出発を意味します。親の責任はお金のことだけではありませんが、ここでは子に対する親の経済的責任について考えてみましょう。
 
財産分与
 (1) 財産分与の意義
 夫婦が離婚する場合、一方は他方に財産分与の請求をすることができます。その意義は第一に、婚姻中に夫婦で協力して得た財産の清算です。夫が外で働き妻が家事をしてきたような場合、財産は夫名義にすることが多いでしょうが、夫が安心して働けたのは妻の内助の功があったためですから、その財産には妻に潜在的な持ち分があると考えられ、離婚の際に清算するのが公平です。また、ずっと家事をしてきた妻がすぐに自立できる収入を得ることも困難でしょうから、財産分与には生活保障をする意味もあります。その他婚姻破綻に責任ある場合の慰謝料の意味が含まれる場合もあります。
 特に妻が子を引き取る場合、子のためにも安定した生活ができることが望ましいので、しっかりこの権利を行使しましょう。
 
 (2) 財産分与の請求
 財産分与について、もし当事者同士で話し合いがつかなければ、家庭裁判所に調停または審判を申し立てます。離婚してからでもよいですが、離婚後2年経つと請求できなくなります。
 
 (3) 財産分与の決め方
 清算という意味では、財産分与の対象となる財産は婚姻中に夫婦で協力して得た財産です(マイナスの財産つまり借金ということもありますが)。特別な事情がなければ、財産形成に対する夫婦の寄与は、五分五分と考えられるようになってきています。夫の今日あるのは妻の内助の功によると考えれば、将来の収入も対象財産となりえます。近い将来退職金を受け取ることが確実であれば、これも考慮に入れてよいのです。
 生活保障や慰謝料の意味であれば、婚姻前からもっていた財産も対象になりえます。
 
養育費
 (1) 養育費の意義
 未成熟子に対する親の扶養義務は、親の生活に余力がなくても自分と同等の生活を保障するという高度の義務であり、親権者か否かを問わないものです。これを生活保持の義務といいます。
 
 (2) 養育費の請求
 養育費は、未成熟子が必要とする限りいつでも請求できますが、離婚の際に額や支払方法を決めておくのがベストです。話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に調停または審判を申し立てます。養育費は子の日々の生活に当てるものですから、月決めで支払ってもらうのが原則です。期限は一応成人に達するまでと決めるのが普通です。支払いは長期間継続するので、子にも親にも状況の変化が起こって、一旦決めた養育費が実情に合わなくなることがあります。こういう場合話し合いで変更することができますが、もし話し合いがつかなければ、やはり家庭裁判所に申し立てます。
 
 (3) 養育費の額の算定
 調停で話し合いを進める場合または話し合いがつかず審判で決めることになる場合、養育費の額は個々のケースで状況が異なるので一律な基準はありませんが、次のような考え方があります。
 まず、子の必要生活費を、父母のうち生活程度が高い方で暮らしていたと仮定して計算します。次に、これを父母が基礎収入に応じて分担します。基礎収入とは、総収入から税金、職業費などの他恒常的出費が避けられないローン返済額などを控除したものです。必要生活費の算出には、多くの場合、厚生省の生活保護基準額を使用しますが、これは分担額計算のために使用するということで、生活保護の額を支払えば足りるということではありません。
 例として、子が母に引き取られ、父が母より生活水準が高い場合の計算を示してみましょう。

 子の必要生活費 = 父の基礎収入× 子の生活保護基準額 

父と子の生活保護基準額の合計

 父の分担額  = 子の必要生活費× 父の基礎収入

父の基礎収入+母の基礎収入

履行の確保
 養育費は子の日々の暮らしに当てるものですから、支払いが滞ると生活に支障が生じます。財産分与も離婚した親と子の生活を支える趣旨であれば同様です。家事債務の多くには多かれ少なかれこうした趣旨が含まれています。しかし、支払いの約束がきちんと履行されない場合もありえます。家庭裁判所で決まった調停・審判は判決と同じ効力があり、強制執行することも可能ですが、もと夫婦などの場合そこまですることはためらう人が多く、また、一般に家事債務は小額ですから強制執行しても費用倒れになるおそれもあります。そこで調停・審判で決まったことが履行されない場合には、家庭裁判所に申し出ると、履行の勧告をしてもらえることになっています。しかしこの措置には強制力がないので、義務者がどうしても従わなければ取立ては困難なのが実情です。

別れて暮らす親子の絆
 親子は別れて暮らしても縁が切れるわけではありません。しかし、疎遠にしているとだんだん愛情が薄れ、養育費を支払いたくなくなることもあるのが人情でしょう。子と一緒に暮らしている親が、子と別れた親の絆を保てるよう図れば子の健全な成長に資するだけでなく、養育費をきちんと払ってもらえる可能性が大きくなるので、子の生活基盤を強化することにつながります。
 
公的な生活保障
 子に扶養義務者がいる場合には、まずその義務を履行することが要請されます(私的扶養優先の原則)。しかし、児童扶養手当などひとり親を支援する公的制度がだんだん充実してきています。また、親が病気になって十分な収入が挙げられないとか、行方をくらましてしまって全く養育費が支払われず生活に困るというような場合には、生活保護を受けることが考えられます。
5 親子の面会・交流
面会・交流はだれの権利
 離婚後あるいは別居中に、別れて暮らす親子が会ったり連絡し合うことを面会・交流と言います。面会・交流する権利は親、子どちらの権利なのでしょうか。学説では、親に帰属した権利と考える説や子どもを権利の主体と考える説など諸説がありますが、いずれの場合も子の福祉優先の原則が強く機能しています。

面会・交流が制限される場合
 次のようなときには子の福祉を害するおそれがありますので、面会・交流の制限をする必要があるかを慎重に検討しましょう。
1  非監護親が、子に暴力を振るうおそれがある場合や、子を奪取するおそれがある場合。
2  子が面会・交流を望まない場合は、子の真意を十分に確かめます。
3  非監護親が扶養能力を持つにもかかわらず子への扶養義務を果たさない場合は、子が望む場合を除き慎重にします。
4  子の年齢が3、4歳以下の場合は、監護親との安定した関係の継続が優先されます。
5  離婚の承諾、親権の帰属、経済的給付をめぐる駆引き、メンツ立ての手段に利用される場合。
 


面会・交流の具体的方法
 具体的な方法は父母が協議して決めます。その際、子の年齢、性別、性格、就学の有無、生活環境などを考え、また、父母と子の負担が過剰にならないように配慮します。
 面会には食事、買い物、訪問、旅行、学校行事への参加など多様な方法が選択できます。
 また、交流の方法も、相手にとって特別な日に電話をしたり、手紙、Eメール、写真、プレゼントを送るなど工夫してください。
 協議できないときは、家庭裁判所の調停、審判で決めることもできますが、強制執行になじまない事柄ですから、父母の話合いで実施できるよう努力しましょう。

楽しく面会・交流するためには
 面会・交流を長続きさせるためには、子どもにとって楽しい時間にすることが大切です。そのためには、離婚後は夫と妻という関係から、子の父母という立場に気持を切り替えて協力し合いましょう。
 「相手に会わせると子どもが混乱する」と言って、会わせたがらない同居親がいます。子どもは父母の両方から愛されているという安心感を必要としています。それがあれば混乱することはありません。また、父母の両方と接することにより、人には性格や考え方に違いがあるということも分かってきます。
 子どもは、親が不仲で、互いに相手が悪いと言って責め合っていると、子どもにとっては悪く言われる親も親ですから当然傷つきます。また、一方の親に忠誠を尽くして得られる称賛を、他方の親からは得られなくなるのではないかと疑心暗鬼になります。これを忠誠心葛藤といいますが、この不安を持つ子どもは、別居親との面会・交流が楽しかったことを同居親に言えず、会うことが負担になります。親同士の不信感が子どもの楽しみを奪ってしまいます。親から言ってほしいのは、「大丈夫よ」の一言です。
 親は面会・交流の実施条件を争うのではなく、子どもが安心して二つの家に居場所を見つけられるように、パートナーとして協力の方法を考えましょう。
 
面会・交流を実施するときには
 面会・交流では、子どもの気持に負担をかけたり、混乱させることがないように十分配慮することが大切です。スムーズに実施するために、次のような点に留意しましょう。

面会・交流に応じる人へ
1  子どもに「会いたくなったらいつでも会っていいよ」と伝えておく。
2  子どもに、相手に会ったり連絡をとることについて悪いことをしているという気持にさせない。
3  子どもが面会に行く時は笑顔で送りだすか、淡々とした態度でいること。
4  面会・交流から帰ってきた子に相手の様子を根掘り葉掘り聞かない。
5  子どもに相手の悪口を絶対に言わない。
6  子どもに関する情報は日頃から相手によく伝えておく。
7  面会・交流に際しての取り決めで相手を細かく拘束しない。

面会・交流をする人へ
1  決めた約束は必ず守り、不信感が生じないようにする。約束を変更する場合は必ず事前に連絡する。
2  子どものペースや体力、日常の生活のリズムに合わせる。
3  子どもとの話題は子どもの好む話を中心に、聞き役にまわる。感情的な態度は見せない。
4  子どもに高額な金品を与えたり、過剰なサービスはしない。
5  子どもに会ったときに相手の様子を根掘り葉掘り聞かない。
6  子どもに相手の悪口を絶対に言わない。
7  子どもを自分以外の人に会わせるのは、親子の面会・交流が軌道に乗ってからにする。
 




セミナー参加者の面会・交流に関するアンケート調査の結果
面会・交流の実施状況
円グラフ1
離婚後にセミナーに参加した人の面会・交流についての意見
円グラフ2



ホーム業務内容相談室セミナー講師派遣ふぁみりお出版物リンク


Copyright (C)2000 Family Problems Information Center