育児休業法が平成4年4月にはじめて施行されてから9年半が,また,同法の改正法である育児・介護休業法が11年4月に施行されてから2年半が経過しました。この間に,雇用保険法の改正により,13年1月に育児・介護休業給付の給付率が25%から40%に引き上げられました。さらに,保育所の待機児童の解消や低年齢児受入れ,延長保育などの保育サービスの多様化に向けた施策も試みられています。いずれも,少子・高齢化への対応の一環として国が打ち出した,働く親に対する育児支援の施策です。しかし,待機児童にとって良質な保育サービスを得るための情報が整備されているとはいえないのが実情です。一方では,子をもうけた親のうち育児休業をとったのは女性では56.4%,男性では0.42%にすぎなかったという現実もあります。また,育児休業を取った後,職場に復帰した女性社員の昇進・昇格,配置転換などを巡るトラブルも相次いでいるといわれます。 今回は,本年7月6日に閣議決定された「仕事と子育ての両立支援策の方針について」から,わが国の最新の子育て支援についての具体的な施策に関する部分を原文に沿いながら要約して紹介し,今後の保育の在り方を考えてみたいと思います。 |
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内閣府に設置されている男女共同参画会議(以下,「会議」という)に,本年1月,総理大臣の指示によって「仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会」(以下,「専門調査会」という)が設置されました。6月19日に専門調査会の最終報告書が会議に提出され,その提言部分が会議決定されました。 提言は,7月6日に閣議決定され,予算上特段の配慮を伴った施策として,遅くても平成16年度までに実施される運びとなっています。 |
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政府は,平成13年2月,「育児・介護休業法の一部を改正する法律案」を第151国会に提出しました。育児休業中は休職扱いとなるので「復帰後10年間は昇格できない」とされたケースや,「残業はできないだろう」と編集部から総務部に異動させられたケース,「他の従業員から不公平だと苦情がでている」としてパートにまわされたケース等が続出したこともあり,さらに,産休や育休が欠勤日数に組み入れられ,ボーナスが全額カットされた女性職員からの損害賠償の裁判で第一,二審とも勝訴となったケースも出るなど,法の不備を補正する必要が求められたためです。同法案は,現在継続審議となっていますが,その改正のポイントは次の5点です。
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一国の総理大臣の所信表明演説に掲げられた内容は,いずれも重いものであり,保育所入所の待機児童ゼロ作戦も,その重い内容のひとつです。上述の専門調査会の「3年間に15万人分の保育施設を」という提言も閣議決定されて,作戦開始の段階に入ったところですが,この数値目標の達成には,かなり困難な現実があるようです。 保育所への入所は,従来,保護者の労働又は疾病等により保育することができないような状態にある乳児又は幼児に対して市町村が決定していました。運営も地方自治体又は社会福祉法人が行ってきました。平成10年4月1日施行の児童福祉法等の一部改正により,保育の実施を希望する保護者が,子どもの個性や保護者の就労状況等に合った保育所を希望し,選択できるようになりました。今回の閣議決定では,さらに保育に対する多様なニーズに対応するために,民間企業の運営面への参入を打ち出しています。しかし,実際には,保育園の運営責任を持つ自治体や,既存の運営者が企業の参入に消極的であったり,企業自身も及び腰であったりするケースが見られます。 もっとも,認可外保育園の活用策で独自の基準を策定し,「公設民営」方式に成功している自治体もあるのですから,政府としては,このような好事例を他の多くの自治体に知らせ,利用者に対しても,ネット情報等によってわかりやすく知らせる体制を整備してほしいものです。 |
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子どもには,その親によって十分な慈しみを受ける権利があります。人生の最も早い時期にこれを経験した子どもは,他を慈しむことができる子どもに成長します。子を持つ父母が,この時期を安んじて育児に専念できるためには,何といっても職場の理解が不可欠です。 子どもを預かる保育の現場からは,親に十分な育児休業を取ってもらいたいとの声もあり,育児休業明けの親が子の保育の実施を希望する場合には,かなり優先的に入所させている施設もあります。 子育てとは,子の自立支援作業であると言っていいでしょう。24時間休みなしの作業です。その中で,親が支援を必要とする場合には,社会の成員が保育のワークシェアリングに携わる仕組みを作り出すことが求められています。自治体,社会福祉法人,企業,職場の同僚,そして国民一般は,子どもの福祉を中心に考えたワークシェアリングを図ってほしいものです。 |
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