ホーム業務内容相談室セミナー講師派遣ふぁみりお出版物リンク

 ストレス社会とさえいわれる昨今。職場への足が重い、心配事で夜よく眠れないというようなことは誰しも経験があるでしょう。 ABA JOURNAL(米国法曹協会雑誌)2006年9月号は、健康問題を扱うジャーナリストによる、法律家とストレスについての記事を掲載しています。 法律家は対立関係の中で仕事をし、紛争の渦中にさらされることが少なくありません。紛争は怒りや恐怖、罪悪感といった感情を生みます。 感情は、心拍数を高める、瞳孔を開く等、体内の変化をももたらしますから、慢性的な否定的感情は身体に悪影響を与えているのです。 しかし法律家は感覚的であるよりも思考家であることを求められ、他人の感情だけでなく自分の感情から距離を置き、身体的感覚をも抑圧しがちで、 そのままでは健康が損なわれるだけでなく命さえも危いと、ライフスタイルや働き方の変革を提言しています。 法律家に限らず、どのような立場の人にも参考になるでしょう。

1.ストレスと免疫システム

 慢性的なストレスは、頭から心臓まで身体全体にかかわるひとつのシステムに影響します。脳は何かを見たり聞いたりして知覚すると交感神経のスイッチが入り、 アドレナリンとコルチゾルが分泌されます。アドレナリンは心拍を高め、コルチゾルは血中にブドウ糖を放出し、早く走り激しく闘うためのエネルギーとなります。 いわゆる臨戦状態です。ストレスを感じたときも同様にこのふたつの強力なホルモンが血液中に分泌されます。恐怖が消滅すると、副交感神経のシステムが働いて、 リラックス反応となり通常のホルモンの状態に変わっていきます。しかし現代のストレス要因は、牙をむいて襲い掛かる野獣のように姿がはっきりとしたものではないのに、 神経システムは何万年の昔と同様に働きつづけています。厳密な解放がないままにホルモンのレベルは高い状態であり続けると、病気を予防する働き、 つまり免疫機能が正常に働かなくなってしまうのです。
 慢性的ストレスは身体をわずかな痛みにも影響を受けやすくすることもあり、深刻な体調不良や病気をひきおこします。 さらにストレスは、身体の細胞レベルの老化を早めるという研究結果も出ています。しかしストレスとの付き合い方を変えれば、ストレスに圧倒されることはなくなるのです。

克服法
・ ゆとりのあるスケジュールに仕事量を調整する。自分の荷が重過ぎると感じたら、それ以上の仕事は断る。 仕事のために、友人との付き合いをキャンセルしない。研究によれば、友人づきあいは、身体の酸素蓄積量を高め、ストレスを解消する。
・ 自身のストレスの兆候に注意する。口唇ヘルペス、咳、鼻水・鼻づまり、一般的な痛みなどは、免疫機能が低下していることを示すサインだ。
 誰にでも浮き沈みはあるが、イライラや愚痴・不満の頻発、悲観的感情や罪悪感、自尊心の低下といった感情面の一時的なストレスシグナルにも気をつける。 慢性的なストレスを放置すると、抑うつ状態や不安状態という、より深刻な精神状態への悪循環を招きやすい。

2.ストレスと気分

 ストレスと感じるかどうかは個人差が大きいのです。不安障害のある人は何か特定のことに捉われ制御できない状態とされ、ささいなことに驚いたり心配したりします。 急激に心拍数が上がり、呼吸が浅くなります。ときには激しいパニック障害に襲われることもあります。結局は、その人がストレスと感じない限りストレスではないのですが、 比較的ストレスに強いと思われている人も油断は禁物です。

克服法
・ 1週間、日々のストレス要因とそれがどのように気分に作用したかを記録する。その記録からパターンを見つけ、ストレス要因に対してよりよい対応で先手を打てるように、戦略をたてる。 確実で達成可能な目標を設定し、達成できたときには自分を褒める。たとえば、疲れたらコーヒーで紛らわすのではなく、昼休みにはスポーツをするというように。
・ 否定的な感情を抱いたときはそれを認識する。結論を急いだり、よくあることと一般化したりすることは、認知の歪みの例で、悪い気分への近道となり易い。考えを整理する時間をとり、 事実は何なのか、見定める。
・ 糖分の高い間食はやめる。気分が沈むと炭水化物が欲しくなるが、濃厚なお菓子はとても危険だ。
すぐに気分が回復するように感じるが、またすぐ急降下し、むしろ前よりひどく感じることになる。どうしても甘いものが欲しいときは、果物を少し食べると身体がゆっくりと消化する。

3.ストレスと睡眠

  夜中に目が覚めたまま寝付けないのは、コルチゾルが覚醒の状態を高めているからです。セロトニンやメラトニンといった脳内化学物質が、 人間の体内で24時間の自然のサイクルを調整しますが、ストレスがあると最初に支障をきたす物質でもあるので、 夜になって血流に高いレベルのストレスホルモンが残っていると睡眠が阻害されます。そうしたやっかいなホルモンを洗い流すいちばんよい方法は、運動です。 1回30分の有酸素運動で心拍数を上げると、コルチゾルを使いきります。このホルモンをうまく代謝しないと、2日半にわたって体内に蓄積してしまうのです。 最も効果的なのは、ストレスを受けた直後に、すべてを使い切ってしまうことです。午前中の仕事でイライラしたときは、昼休みにジムに行きましょう。 午後からの仕事がストレスレベルを引き上げたなら、夕方のランニングをしましょう。ただし、くれぐれも6時以降のトレーニングはしないように。就寝時に近い運動は逆効果です。

克服法
・ 脳を休ませるために午後の休みをとる。単に机に伏して休む、または、オフィスの床に5〜10分横になるだけで、覚醒レベルを回復することができる。
・ 1日の仕事の終わりに、5分間をかけて翌日のための考えや気がかりなことや行動を書き留める。そうしたらすべてを忘れる。 仕事を持ち帰るとか、夜に仕事の話題で討論するのはストレス反応のきっかけとなり、睡眠を困難にする。
・ 寝室は十分休める空間にする。ベッドは睡眠とセックスのためだけに使うこと。テレビを見たり、仕事をしたり、飲食したりはしない。

4.ストレスと消化

 ストレスから、胃のムカムカ、胸焼け、胃痙攣といった、胃の障害を実感することが多いのですが、食物は胃には30分しか残留しません。 腸は全長にわたって48〜72時間消化にかかわりますから、障害を受ける可能性が大きいといえます。ストレスホルモンの存在は消化の促進を妨げるので、 なにかプレッシャーがあると、食物は発酵したり腐敗したりして下痢や便秘を引き起こします。そのような症状はIBS(過敏性腸症候群)等の病気に見られます。 アメリカ人5人にひとりはこうした症状を訴えています。 IBSは腸の神経や筋肉が非常に過敏なのが特徴で、しばしば激しい痛みを伴う胃の痙攣まで起こしますが、原因はまだわからず、ストレスが引き金になっていると考えられています。 乳製品、アルコール、カフェイン、脂肪分の多い食品も同様に症状を悪化させます。

克服法
・ 新鮮な野菜や果物を多く摂る。特にバナナ、玉葱、葱、にんにく等は、腸内環境を整える。
・ 自分のアルコール摂取に気をつける。アルコールは胃粘膜を傷める。
・ 抗生物質はなるべく使わない。ささいな感染症治療のために過剰に使うと、食物の分解をする微生物を見境なく殺していまい、腸内環境の微妙なバランスを崩す可能性がある。
・ ヨーグルトをたくさん摂取する。 生きた微生物が、腸内の善玉微生物を増殖させ、悪玉微生物を駆逐すると考えられていて、ストレスそのものを解消するわけではないが、腸の健康を支える。

5.ストレスと心臓

 心臓は強い筋肉でできていて毎日休まず血液を送っていますが、ストレスには敏感です。 '90年代終わりの研究で、血圧の高い人がストレスを受けると心臓発作を起こすリスクが高いという結果が出されました。 アドレナリンは心臓の筋肉にとって成長ホルモンです。大きく強い心臓を持つのはよいことである一方で、心臓が大きくなればなるほど、動脈は組織を守るために細くなるのです。 高血圧の人はそうでない人よりも心臓の動きが難しいので、ストレスを受けるとさらにその動きが弱まります。 また、血管のデリケートな内側にダメージを与え、堆積物を増加させるのです。肥満、喫煙、糖尿病、コレステロール値の高い人等は、さらに心臓発作の危険が高くなります。

克服法
・ 喫煙はやめる。タバコが気分を落ち着かせても、ニコチンやカーボン化合物が血中酸素量を減少させ、血管の壁にダメージを与える。 そして脳卒中を誘発する血栓を形成させるきっかけとなる。果物・野菜・低脂肪食品といった心臓病予防食品を摂取する。
・ 動物性脂肪の摂取を減らし、魚や植物性の食品を摂る。青魚の脂肪にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富で、 心臓の機能を改善するものとして知られている。ナッツや種子類は、同様の働きをするα―リノレイン酸を多く含む。
・ 感情面の健康を高める。心臓の健康のスペシャリストは、感謝している10の事柄について、毎日書くことを推奨している。 そうすることでストレスホルモンを減らし、幸福な感覚を増加させる。さらに、この感謝の日記は、状況のよみ方を変え、究極的に自分の真の生き方を変えるように助けてくれる。



【「ふぁみりお」40号の記事・その他】

協議離婚について考える  - 合意しておくべき事項とそれを守らせる手続きの確保 -  

少年たちと言葉(続)
 ホーム 業務内容 相談室 セミナー 講師派遣 ふぁみりお 出版物 情報公開 リンク
Copyright (C)2002 Family Problems Information Center
* 本ホームページの内容を無断で転載することを禁じます。