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 家庭問題情報センターでは平成9年に「女性のための電話相談」を開設し、これまで週2回の電話相談を継続してきました。 年々相談件数が増えており、男性からの相談も受けるようになりました。 相談内容は多岐にわたり、DV問題、青少年の引きこもり、高齢者の問題など、その時々の世相を反映しています。 最近は子育ての相談が急増しています。地域から隔絶し孤立した家の中での子育てが重荷になって、育児ノイローゼになったり、 また子への虐待に発展したりすることもあります。当センターではこのような状況をふまえて、子育てに悩む人のために平成17年度から2年間、 財団法人倶進会の助成を受けて「子どもの養育・親子関係の悩みについての無料電話相談」を実施しました。 17年度は520人、18年度は531人の方が電話をかけてきました。 本稿は、18年度1年間に受けた電話相談の概要です。

◆ 電話相談者の内訳

 18年度には531人の方から相談が寄せられました。その内訳は以下のとおりです。
◇ 相談者の性別 女性  488人 男性  43人

◇ 相談者の年齢


 乳幼児のいる30代の人と思春期の子を持ち親子関係に悩む40代の人からの相談が目立ちます。

◇ 相談内容


 未成年の子を持つ親からの相談が多いのは予想されたことですが、成人した子の親からの相談が1割を超えたことが注目されます。

◇ 相談者の居住地域
 東京、神奈川、埼玉、千葉で80%を占めていますが、その他21道府県におよび広く全国から相談が寄せられています。

◆ 電話相談を選んだ理由

 相談者に電話相談を選んだ理由を聞いたところ次のような回答がありました。
 ・ 乳幼児がいたり、親族の介護中で外出しにくい
 ・ 近くに相談機関がない
 ・ 予約せずに思い立った時に相談できる
 ・ 電話なら緊張せずに話せる
 ・ 匿名で相談できる
 ・ 相談料がかからない
 年々相談者が増加しているのは、家に居ながらにして相談できる便利さと、匿名でも相談できる気軽さからだと思われます。

◆ 相談事例から

(プライバシー保護のためケースは実際のままではありません)
事例1  若いお母さんの相談
 A子さんは、妊娠が分かった時、夫がちっとも嬉しそうでないことが気がかりでした。 生まれたあとも毎晩深夜に帰宅、休日出勤で、育児はA子さんにまかせっぱなしでした。 余りおかしいので、夫の携帯電話を見たら、職場の女性と交際をしていることが分かりました。 夫を追及すると怒って離婚しろと言い出したのです。もう我慢も限界ですが、今後のことが不安で離婚にも踏み切れません。 最近はいらいらして子どもに当たってしまうことがあります。

 若い世代の相談では、親になる責任感が芽生える以前に妊娠して結婚したケースが目立ちます。 きょうだいも少なくほとんど乳幼児に触れた経験がないまま親になる若者も少なくありません。家計もまだ豊かでなく、 育児不安をかかえた若い妻と、父親として未熟な夫との生活は、互いの不満が増大し理想と現実のギャップに耐えられないと訴えます。 出産のために実家に戻った妻が静養期を過ぎても帰って来ないと訴える夫もあります。 それぞれが、自分の落ち度に気付かず相手の欠点ばかりを数え上げる相談者が多いのです。 相手を責める相談者には、不満を受けとめた上で、一方的に責められたらどんな気持ちになるかを考えてみるよう促しています。 夫が育児に協力しないとなじる妻には、「手伝って」と声高に言うより、子どもの日々の目覚しい成長を伝える方が有効かも知れないと伝えています。 また、夫には、慣れない育児に疲れている妻には、優しい労りの言葉が何よりの励ましになると伝えています。 A子さんにはもう一度夫婦関係の修復のためにじっくり夫と話すように助言しました。

事例2 離婚と子ども
 最近協議離婚をしたB子さんは、小2の長女と暮らしています。 環境が変わったせいか長女は元気がなく、またチックなどの身体症状も出てきたことを心配しています。 そんな時、元の夫が子に会いたいと言ってきました。離婚のとき確かに父子の面会の話がでて、会わせると言いましたが、 元の夫はもともと自己中心的で子どもにも無関心だったのに、と思うと気が重くて会わせたくないのです。子どもも父親に会いたくないと言っています。

 離婚する時、親は自分たちの紛争にばかり目が行き、子どもが両親の不和の中で深く傷ついていることに気が付かない場合があります。 子どもはまた元の家族に戻れるという幻想を抱いたり、自分のせいで親が離婚したと考えていることがあります。 子どもはこれから自分の身に起こることが分からず不安です。子どもは、父母がうまくやれなかったことをきちんと伝えれば理解します。 また、別れて暮らす親との縁は切れないのだということも伝えましょう。 どんな父親でも父親の存在は大事です。面会は父親が子のことを気に掛け見守っているというメッセージを伝える貴重な場になります。 子の立場に立って子どもの気持ちをもう一度考えるよう助言しました。

事例3 孫を思う祖父母の相談
 C夫さんの長女は共働きで、2歳の子の世話を近くに住む夫の母に頼んで夜遅くまで働いています。 毎夜子を引き取りに行っていましたが、寒い冬の夜に孫を帰すのは可哀相だと言われ、週末だけ子どもを引き取ることになりました。 孫は夫の母にすっかりなついて週末も帰りたがらなくなりました。 長女は、夫の母が子を甘やかしているように感じていますが、それを言えずに落ち込んでしまっています。 C夫さんは、孫が夫の実家に取り込まれてしまって手が出せないし、このままでは心配なのでと、電話をかけてきました。

 最近は、祖父母からの孫についての相談が増えています。仕事をもつ親が時間や経済的にゆとりがなく祖父母に子育てをしてもらっている場合があります。 親と祖父母が躾け方をめぐってそれぞれが主張を譲らず家族の不和に発展することがあります。相談者には、子どもがどう感じているかを想像してもらいます。 それぞれが良かれと思っているけれど統一の取れていない大人の思いが、子どもを混乱させていることに気付いてもらうのです。 祖父母には、躾の方針は親にまかせて見守り、必要とされたときに協力をするという関係になることが、子どもにとって幸せなことではないでしょうかと助言します。

◆ 相談担当者からのメッセージ

 相談をしてきた人の感想の一部を紹介ますと、
 ・ 八方ふさがりで混乱していたが、話しているうちに気持ちが落ち着いた。
 ・ いくつか提示された選択肢が解決の糸口になりそうだ。
 ・ 自分のやり方は間違っていないと考えていたが、別の角度から見直すことが必要との助言で反省した。
 ・ ゆっくり聴いてもらえ、助言も納得できた。
 電話による相談は距離が離れていても、声が耳元に届くので身近に相談しているように感じられます。 周囲に相談する人がいなかったり、いても理解されずに傷ついた経験のある人には、匿名で聞いてもらえる電話相談は安心して話せます。 また、問題の答えを既にもっている人でも、今できること、してはいけないことなどを担当者と共に整理し検討することで、 方向が明確になり、気持が前向きになれることがあります。
 事例としては取り上げませんでしたが、最近、子を虐待してしまう、成人した子が引きこもっている、老人介護が大変というような相談も多くなっています。 いずれも起きている問題を家族の中だけで解決しようとして行き詰ってしまっています。 地域の繋がりが薄れ家庭が孤立しやすい社会状況の中で、家族の中の問題を家族の中だけで解決しようとして、家庭そのものが引きこもってしまっている場合があるのです。 問題が大きくなると外部の人の支援がなければ解決できないこともあります。 要は、心配なことは自分ひとりで抱え込まず、気軽に近隣や専門家に早めに相談することではないでしょうか。 悩みを外に向かって発信する手段として気軽に出来る電話相談はとても有効な方法です。 電話相談から来所しての相談を希望する方もありますが、当センターでは面接相談(有料)も実施しています。 また、問題によっては他の専門機関に繋げたほうが良い場合もありますので、その機関の紹介もしています。


家庭問題情報センターの無料電話相談

家族の問題や心の問題の相談を受けています
電話番号  03−3971−8553
相談時間  毎週 水曜・金曜
      午前10時〜午後4時
相談担当者 当センターファミリーカウンセラー




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